賃金等請求権の消滅時効等の経過措置撤廃を求める声明
2025/4/28
賃金等請求権の消滅時効等の経過措置撤廃を求める声明
2025年4月28日
日本労働弁護団
幹事長 佐々木 亮
1 2020年労働基準法改正時に制定された経過措置(労働基準法附則第143条)により、労働関係に関する重要な書類の保存期間(109条)、付加金の除斥期間(114条)、賃金請求権(退職手当の請求権を除く)の消滅時効(115条)がいずれも5年ではなく「当分の間」3年間とされた。
2 しかしながら、賃金等請求権の消滅時効を民法と同じ5年間とすべきであることや、上記経過措置を設けるべきではないことは、当弁護団の2018年7月9日付け「賃金等請求権の消滅時効及び有給休暇の取得促進に関する意見書」、2019年10月18日付け「労基法を速やかに改正し賃金等請求権の消滅時効を改正民法に合わせることを求める声明」、2019年12月26日付け「賃金請求権の消滅時効について『当分の間3年間とする』との公益委員見解に反対する声明」、2020年2月3日付け「賃金等請求権の消滅時効に関する法律案要綱に対する意見書」で繰り返し指摘したとおりである。
同意見書及び声明で指摘したとおり、民法よりも労働者に酷な条件を労働基準法において定めることは、労働者保護を目的として最低基準を定める同法の性格と根本的に矛盾しており到底容認できない。また、労働者に該当しない請負人等の労務報酬請求権の消滅時効期間が5年であるにもかかわらず、労働者の賃金等請求権の消滅時効期間を5年より2年も短縮した3年とすることに合理性はなく、かつ、その必要性も全くない。
3 さらに、今般、注目すべき調査結果が公表された。2025年3月公表の厚生労働省の「労働時間制度等に関する実態調査」によると、事業所での労働者名簿・賃金台帳の保管期間について、10年超えが27.8%、7年超え10年以下が16.4%、5年超え7年以下が23.3%と、5年を超えて労働者名簿・賃金台帳を保管している事業所が合計67.5%にも及んでいるという実態が明らかとなった。
このような7割近い事業所で5年を超えて労働者名簿・賃金台帳を保有している実態は、当時の労政審で使用者代表委員が強調していた“賃金台帳等の記録の保存期間の延長に伴うコスト増が企業にとって負担となる”という言い分は成り立たなくなったことを意味している。ここに至ってはもはや経過措置を維持する合理的理由は皆無である。
4 したがって、日本労働弁護団は、労働基準法附則第143条を直ちに撤廃し、労働関係に関する重要な書類の保存期間、付加金の除斥期間、賃金等請求権の消滅時効期間を、その他の一般債権と同じ5年とすることを求める。
以上