解雇の金銭解決制度検討に反対する幹事長談話
2025/11/21
解雇の金銭解決制度検討に反対する幹事長談話
2025年11月21日
日本労働弁護団
幹事長 佐々木 亮
厚生労働省は、2025年11月18日、第205回労政審労働条件分科会において、解雇の金銭解決制度について、経済学者や法学者らによる有識者検討会を設ける方針を明らかにした。報道によれば、新たに設置される検討会においては、制度を導入した場合の解決金水準や制度設計を検討するとのことである。
そもそも、解雇の金銭解決制度は不要であり、導入すべきではないことは、当弁護団が繰り返し述べてきた通りである。すなわち、解雇事件は現行の民事訴訟制度の和解手続及び労働審判制度の調停(和解)・審判手続を活用することによって解決が図られているところであって、解雇の金銭解決制度を導入することで法制度上「解決金」の「水準」を定めれば、かえって、従来図られてきた個別事情を反映した柔軟な解決が阻害される危険性が極めて高い。また、使用者側に、およそ理由のない解雇や不当な退職勧奨に利用されること、さらには今後、使用者側による金銭解決の申立権にまで拡大し、解雇規制の緩和がさらに進行することも危惧される。
また、今般厚生労働省が設置するという検討会は研究者によるものであるが、制度の在り方についてはすでに法学者による議論が2022年より行われ、一定の結論をみたところである。そして、解決金の水準など、そもそも議論すべきではないが、仮に議論することがあり得ても、解雇の金銭解決制度が労使関係に重大な影響を及ぼすことから、労使の代表を抜きにした場で議論することは行われるべきではないし、議論を行うのであれば、少なくとも労働紛争の実態を把握している弁護士を入れて議論すべきである。
当弁護団は、改めて、有識者検討会を設置し、解雇の金銭解決制度について議論すること、そして、解雇の金銭解決制度を導入することに対して、断固として反対する。
以上