実効的な子の看護等休暇制度に向けた対応を求める談話
2025/12/5
実効的な子の看護等休暇制度に向けた対応を求める談話
2025年12月5日
日本労働弁護団
幹事長 佐々木 亮
2025年4月1日、育児介護休業法の改正に伴い、子の看護等休暇については、名称が「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」に変更され、対象となる子の範囲は「小学校3年生終了時」まで拡大され、そして、取得事由に「入園(入学)式や卒園式」とともに、「感染症に伴う学級閉鎖等」が追加された。
しかし、現在、SNSを中心に、子の看護等休暇は「使えない制度」という不満が噴出している。インフルエンザ等の感染症は毎年のように流行しているが、2025年は、11月末時点で全国のインフルエンザの患者数が14週連続で増加しており、10年間で最も早いペースで感染が拡大している。厚生労働省が11月21日に発表した調査によれば、学級閉鎖となった学校は9月からの累計で1万校を超えたという。SNS上では、子どもの看病や休校・学級閉鎖への対応に追われる保護者たちから「5日では全く足りない」、「看護休暇あるけど無給…」などの声が挙がっている。なお、当弁護団が2024年3月から4月にかけて実施したアンケートでも、取得可能日数の増加や有給化を求める切実な声が多数あがっていた。
インフルエンザに感染した場合、回復するまでに一定の日数がかかる。また、自身の子がインフルエンザに感染していない場合でも、休校や学級閉鎖となれば、保護者は日中の子の食事等の世話等に対応せざるをえない(このことは、低学年児童の親においては特に顕著である)。
ところが、冒頭で言及した育児介護休業法の改正においては、取得日数が見直されることはなかった。すなわち、子の看護等休暇の取得日数は子ども1人で5日、2人以上は10日間にとどまり、子が3人以上でも最長で10日間なのである。さらに、この改正において有給化も実現せず、有給とするか無給とするかについては企業の判断次第となっている。なお、現状では、子の看護等休暇を「無給」扱いとする企業が多数派である。こうした状況から、子の看護等休暇は、育児介護休業法の改正を経ても、依然として「使えない制度」と批判され続けているのである。
共働き世帯は年々増加し、2024年時点で1300万世帯にのぼる(総務省「労働力調査」)。そのため、「子どもがインフルエンザに罹った」、「学校が休校になった」、こうした事態をどのように乗り切るか、男女問わず多くの労働者が直面する深刻な問題となっている。そして、労働者は、かかる事態を乗り切るために年次有給休暇の取得を余儀なくされているのが実情であり、そのため、感染した場合に備えて有給休暇を利用せずに残しておくことも余儀なくされているのが実情である。このような実情は、労働者が心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を送れるようにするためという有給休暇の本来の趣旨にも悖るものである。
現状を打破し、子の看護等休暇を少しでも実効的な制度にしていくために、取得理由や取得日数、子の看病等のために有給休暇等の他の制度を利用した日数、他の制度を利用せざるをえなかった理由、男女別の年間取得日数等に関して、できるだけ多くの育児期の労働者を対象とした大規模な調査を早急に実施すべきである。そして、調査の結果を踏まえて、子の看護等休暇をより実効的な制度にするための議論を開始すべきである。
当弁護団は、育児・介護を担う労働者がそれゆえに職場、そして社会で不利益を被ることなく、男女ともに仕事と育児・介護を両立することのできる社会の実現に向けて、今後も、より具体的な対応や施策を求めていく。
以上