私の会社は服飾品の製造・販売を行っています。私は、デパート内の会社の店舗(テナント)で接客等を行っています。緊急事態宣言以降、デパートが休業することになり、私の働く店舗も営業できなくなりました。この場合、私や他の従業員の賃金はどうなりますか?せめて休業手当はもらえるのでしょうか?

2020/4/25

ア テナント契約を結んでいる店舗が、デパート休業に伴って営業ができなくなっていますが、店舗がデパートとの賃貸借契約にしたがって、店舗を使用収益したいのに、デパートの都合でそれができなくなっているという場面です。

これは、店舗のスタッフからすれば、使用者側に起因する事情により勤務することができなくなっている場面であるといえます。労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」がある休業は、労働者の生活保障の観点から緩やかに解釈されるべきですので、本件では使用者側に起因する事情によって勤務することができなくなっている以上、店舗のスタッフは、少なくとも同条に基づき休業手当の支払を受けることができます。なお休業の場合、休業手当を支給した会社は雇用調整助成金を活用できることがあります(前記「(3)雇用調整助成金の活用」参照)。

イ 更に、当該店舗が休業せざるを得ないとしても、それは直ちに同店舗のスタッフの行うべき仕事がないということにはなりません。労働者の勤務するデパートの上記店舗が営業できないとしても、会社が同デパート以外でも店舗を運営しており、同店舗は営業を続けている、あるいは本社の営業・総務・経理等他の部署で行うべき業務があり、配置転換の可能性がある場合、会社は休業した店舗のスタッフに業務を行わせることができます。そのような余地があるのに会社が検討を行わない場合、民法536条2項により、店舗スタッフは賃金請求権を失わず、賃金全額を会社に請求することも考えられます。まずは休業手当分を確実に支払ってもらい、状況に応じて、同支給分と賃金全額の差額の請求を検討しましょう。

ウ なお、デパートのテナントの店舗に派遣されて働いている派遣労働者もいます。デパートの休業に伴って働けなくなった場合、それは派遣元事業主と派遣先との労働者派遣契約の問題、すなわち派遣労働者からすれば使用者側の事情であり、少なくとも労働基準法26条の休業手当の支払を受けるべきであることは同様です。また、派遣元事業主が他の業務をさせることができる場合には、賃金全額の請求も考えられるでしょう(派遣労働者の解雇・雇止め後記「12 派遣」を参照)。