私たちは、病院で働く医師、看護師です。急に高熱が続くようになり、検査をしたところ、新型コロナの陽性反応が出ました。この場合、労災認定されるのでしょうか。

2020/6/9

厚生労働省は、新型コロナの感染による労災保険給付申請に対応するための労働基準局課長通達を出しています。まず、基本的な方針として、「一般に、細菌、ウイルス等の病原体の感染を原因として発症した疾患に係る業務上外の判断については、個別の事案ごとに感染経路、業務又は通勤との関連性等の実情を踏まえ、業務又は通勤に起因して発症したと認められる場合には、労災保険給付の対象となる。」とし(令2.2.3基補発 0203第1号)、その上で、医療従事者等(患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等)については原則として労災保険給付の対象となることとしています(令2.4.28基補発0428第1号、以下「4・28通達」)。

4・28通達が出されたことにより、今後は新型コロナウイルスに感染した場合の労災保険給付の判断の仕方は、3つの労働者の業務類型に分けて判断されることになります。すなわち、①医療従事者等が感染した場合、②一般の労働者で、感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境での業務に従事していた者が感染した場合、③ ②以外の一般の労働者が感染した場合に分かれます。

①の「医療従事者等」とは、㋐患者の診療若しくは看護の業務、㋑介護の業務又は㋒研究その他の目的で病原体を取り扱う業務に従事する者のことをいいます。

国内の医療従事者については、「患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる」としています。これによって、具体的な感染経路を特定できなくても、医療従事者等は、原則として労災保険給付の対象になります。

ここで、診療や看護の対象となる「患者」は新型コロナウイルスに感染した患者や感染の疑いのある患者に限りません。全ての病院・診療所、歯科医院の患者が含まれます。「医師、看護師」は新型コロナウイルス感染の治療を行っている病院に限定されず、全ての病院・診療所、歯科医院で勤務する者も対象になります。また、「介護の業務」は、病院や診療所におけるものに限定されるのではなく、高齢者施設、障害者施設における「介護の業務」も含まれます。この通達の趣旨は、広く場所を問わずに介護の業務に従事する労働者にも適用しようとするものと解されるので、訪問介護に従事する労働者も対象となると考えられます。

Q3‐2‐2の医師や看護師は、医療従事者等に当たりますから、原則として、労災保険給付の対象となります。

なお、医師従事者等の労災申請(新型コロナの場合)については、当弁護団の有志が全国医師ユニオンと共同で「医療従事者のための新型コロナウイルス(COVID-19)感染に関する労災Q&A」を作成しました。詳しくはこれをご覧ください。