新型コロナに感染してしまい、休業を余儀なくされました。原因は、毎日の通勤において余儀なくされる、満員電車だと思います。労災になりませんか?

2020/6/9

  この場合は、令和2年2月3日付通達(令2.2.3基補発 0203第1号。以下「2・3通達」)の基本的考え方によって判断されます。すなわち、「個別の事案ごとに感染経路、業務又は通勤との関連性等の実情を踏まえ、業務又は通勤に起因して発症したと認められる場合」には、労災保険給付の対象となります。以下は、2・3通達が挙げている判断事例です。

ア 海外出張していた場合

【業務上と考えられる例】

○ 新型コロナウイルス感染症が流行している地域(武漢)に出張し、商談 等の業務で新型コロナウイルスの感染者等と接触、業務以外(私的行為中など)に感染源や感染機会がなく、帰国後発症した。

【業務外と考えられる例】

○ 私的な目的で新型コロナウイルス感染症が流行している地域(武漢)に 渡航滞在した場合や、私的行為中に感染者等と接触し感染したことが明らかな場合で、帰国後発症した。

イ 国内で発症した場合

【業務上と考えられる例】

○ 接客などの対人業務において、新型コロナウイルスの感染者等と濃厚接触し、業務以外に感染者等との接触や感染機会が認められず発症

【業務外と考えられる例】

○ 業務以外の私的行為中(流行地域(武漢)に最近渡航歴がある場合も含む)に感染者と接触したことが明らかで、業務では感染者等との接触や感染機会が認められず発症

このように、一般的にみて感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境ではない業務に従事していた者が感染した場合は、当該労働者が業務中に新型コロナウイルスの感染者と濃厚接触したか、または業務中に感染の機会があったかなど具体的な感染経路を特定することが求められることになるでしょう。

Q3-2-4の場合も、上記の2・3通達によって判断されることになります。すなわち、「個別の事案ごとに感染経路、通勤との関連性等の実情を踏まえ、通勤に起因して発症したと認められる場合」には、労災保険給付の対象となります。ただし、通勤中であっても、どこで新型コロナウイルスを体内に取り込んだか、感染経路を証明することは、容易でない場合が多いと思います。

まずは、健康保険の傷病手当金の受給手続をとることをお勧めします。4日以上連続して業務に従事できなかった場合、健康保険法等を根拠とする傷病手当金を受給することができます(但し、国民健康保険については、傷病手当金は条例等による自治体の任意対応とされています。今回、新型コロナに感染した被用者に対する傷病手当金の支給に要した費用について、市町村等に対して国が特例的な財政支援を行うので検討されたいとの厚労省事務連絡(令和2年3月10日付「新型コロナウイルス感染症に感染した被用者に対する傷病手当金の支給等について」)が出されていますので、お住まいの自治体に問い合わせしてみましょう。)

なお、事後に通勤中の感染経路が判明し、労災申請をすることができて、労災認定がなされたとしても、傷病手当金の受給とは矛盾しません。