私は、フリーランスで働いています。感染防止という理由で、仕事のキャンセルが相次いで、収入が激減してしまいました。このままでは生活していけません。どうしたらよいでしょうか。

2020/4/14

(1)仕事のキャンセルについて契約書等において取り決めがある場合

仕事のキャンセルは、原則として、締結している契約の取り決めにしたがって対応することになります。そのため、キャンセルの時期にしたがってキャンセル料を請求していくことが原則になります。その場合、コロナウイルスの影響とはいえ、依頼者からのキャンセルになりますので、依頼者の都合によるキャンセルを基礎にキャンセル料の請求をしていくのが原則になります。

この点に関しては、契約条件の変更と関連して政府からの要請がありますので(詳細は後述。)、下請法、独禁法の趣旨に照らして一方的に条件変更は控え適正な対応が求められることになっています。

 

(2)政府からの要請

(https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200310007/20200310007.html)

事業基盤が弱く、収入の減少が生活基盤の悪化に直結しやすい個人事業主・フリーランスに対する影響を最小限とするため、発注事業者に対して、取引上の適切な配慮を行うよう、経済産業大臣、厚生労働大臣、公正取引委員会委員長が連名で関係団体を通じ、以下の要請がなされています(令和2年3月10日20200309経第1号、厚生労働省発雇均0310第4号、公取企第25号)。

・新型コロナウイルス感染症の拡大防止やそれに伴う需要減少等を理由に、個人事業主・フリーランスとの契約を変更する場合には、取引の相手方である個人事業主・フリーランスと十分に協議した上で、報酬額や支払期日等の新たな取引条件を書面等により明確化するなど、下請振興法、独占禁止法及び下請代金法等の趣旨を踏まえた適正な対応を行うこと

・新型コロナウイルス感染症により影響を受けた個人事業主・フリーランスが、事業活動を維持し、又は今後再開させる場合に、できる限り従来の取引関係を継続し、あるいは優先的に発注を行うこと

・個人事業主・フリーランスから、発熱等の風邪の症状や、休校に伴う業務環境の変化を理由とした納期延長等の求めがあった場合には、取引の相手方である個人事業主・フリーランスと十分に協議した上で、できる限り柔軟な対応を行うこと

 

(3)政府による支援策

ア 持続化給付金

新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年1月~12月のうちのひと月について、売上が前年同月比で50%以上減少している法人や個人事業主(フリーランスを含む)等に対して、事業継続のための持続化給付金が支給されます。給付額は、法人が200万円、個人事業主が100万円(ただし、前年総売上からの減少分が上限)です。

5月1日から申請受付が開始されました。申請の必要事項等、申請要領の詳細は経済産業省ホームページをご覧下さい。

イ 無利子・無担保融資

新型コロナウイルス感染症の影響により、資金繰りに苦しむ事業者(フリーランスを含む)を対象に、運転資金及び設備資金を実質的に無利子・無担保で融資する制度が用意されています。

民間金融機関からの融資に際して政府系金融機関が100%の信用保証を行う制度(「セーフティネット保証4号」、「同5号」、「危機関連保証制度」)のほか、政府系金融機関による融資制度(「新型コロナウイルス感染症特別貸付」、「危機対応融資」、「小規模事業者経営改善資金融資(通称マル経)」の特例措置)があり、原則として、1か月の売上高が前年同時期比5%以上減少している個人事業主(事業性のあるフリーランス含み、小規模に限る)であれば、実質的に無利子・無担保による融資を受けることができます。

  民間金融機関からの信用保証付融資については最寄りの民間金融機関又は信用保証協会、新型コロナウイルス感染症特別貸付及び小規模事業者経営改善資金融資については最寄りの日本政策金融公庫(沖縄振興開発金融公庫)、危機対応融資については商工中金相談窓口(0120⁻542⁻711)へお問合せ下さい。

詳しくは、経済産業省「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」をご覧下さい。

ウ 小学校休業等対応支援金

個人で就業する予定であった方にも、業務委託契約等に基づく業務遂行等に対して報酬が支払われており、契約において業務従事や業務遂行の態様、業務の場所・日時等について、発注者から一定の指定を受けているなどの所定の要件を満たす場合に支援を実施することとし、2020年2月27日から9月30日までの間に、臨時休業した小学校等の子の保護者が子の世話を行うために就業できなかった日数に応じて定額(2020年2月27日から3月31日までの間に就業できなかった日について4,100円/日、同年4月1日から9月30日までの間に就業できなかった日について7,500円/日)を支給することとされています。

エ 納税猶予・減免

2020年2⽉以降、収⼊が減少(前年同⽉⽐▲20%以上)したすべての事業者について、 無担保かつ延滞税なしで納税を猶予する制度があります。対象税目は、法人税や消費税、固定資産税など、基本的にすべての税となっています。

これまでは特例で、⼀定の期間(原則1年)、⼤幅な⾚字が発⽣した場合に納税を猶予するという制度がありましたが、原則、担保提供が必要で、軽減はなされるものの、延滞税は免除されませんでした。しかし、今回の制度では、2020年2⽉から納期限までの⼀定期間 (1か月以上)において、収入が減少(前年同期⽐概ね20%以上)した場合、担保提供や延滞税の負担なしで、1年間の全ての費目の納税を猶予するというもので、制度の大幅な変更がなされています。

フリーランスも本制度の適用対象となっています(財務省ホームページ)

 

(4)「労働者」に該当する場合もありうる

なお、フリーランスの方でも労働者として評価される場合があります。

「労働者」に当たるか否かは、契約の形式ではなく、実態から判断されます。そのため、契約書上、「業務委託契約」や「請負契約」等という形式であったとしても、労働基準法上や労働契約法上の「労働者」であると判断される可能性があります。仮に、労働者と判断されれば、このQ&Aで述べてきたような、あらゆる労働法上の保護を受けられることになります。

「労働者」と判断されるか否かは法律的な判断ですから、働き方の詳細を確認する必要がありますので、弁護士に相談されることをお勧めします。