私は、国家公務員(一般職)ですが、職場で新型コロナへの感染予防対策がされておらず不安です。職場で感染予防対策は取ってもらえないのでしょうか。
2020/6/9
(ア) 国の感染予防対策の義務
国は、国家公務員に対して、信義則上、安全配慮義務を負っており、国家公務員が職務遂行するに当たってその生命・身体を保護する義務があります。そのため、国には、国家公務員が職場で新型コロナに感染しないように対策する義務があるといえるでしょう。
また、人事院は、「新型コロナウイルス感染症の大規模な感染拡大防止に向けた職場における対応について(通知)」(職職―151令和2年4月6日)において、公務においても感染対策を進めることを要請しています。以下では通知の内容を一部紹介します。詳細は通知を確認してください。
(イ) 協議
上記通知では、「新型コロナウイルス感染症の大規模な感染拡大を防止するために、以下の 内容を参考として、職場の実態に即した、実行可能な感染拡大防止対策を検討してください。 その際、必要に応じて、健康管理医に対策の検討や実施に当たっての意見を求めるとともに、人事院規則10―4(職員の保健及び安全保持)第14条 に基づき職員の意見を聞いてください。」というように、職員の意見を聞くことを求めています。
このように、不安に感じる点を職員から積極的に意見を述べていくことができます。一人で意見を述べるだけではなく、職場の同僚と一緒に意見を出したり、職員団体を通じて意見を述べることもより有効でしょう。
(ウ) 職場内での感染防止
上記通知では、①換気の徹底等、②接触感染の防止等、③飛沫感染の防止、④一般的な健康確保措置の徹底等が要請されています。
①換気の徹底等では、「必要換気量(一人あたり毎時30㎥)を満たし「換気が悪い空間」としないために、職場の建物が機械換気(空気調和設備、機械換気設備)の場合、換気設備を適切に運転・管理し、ビル管理法令の空気環境の基準が満たされていることを確認すること。」、「 職場の建物の窓が開閉可能な場合は、1時間に2回以上(30分に一回 以上、数分間程度、窓を全開する。)とすること。」などが挙げられています。
②接触感染の防止等では、「物品・機器等(例:電話、パソコン、フリーアドレスのデスク等)については複数人での共用をできる限り回避すること」、「外来者等に対し、感染防止措置への協力を要請すること。」などが挙げられています。
③飛沫感染の防止では、「職場においては、人と人との間に十分な距離を保持(1メートル以上)すること。また、会話や発声時には、特に間隔を空ける(2メートル以上)こと。」、「テレビ会議、電話、電子メール等の活用により、人が集まる形での会議等をできる限り回避すること。」、「外来者等との対面での接触や、これが避けられない場合は、距離(2メ ートル以上)を取ること。また、業務の性質上、対人距離等の確保が困難な場合は、マスクを着用すること。」などが挙げられています。
④一般的な健康確保措置の徹底等では、「疲労の蓄積(易感染性)につながることから長時間の超過勤務を避けること。あわせて、適切な勤務時間管理、超過勤務の抑制にも留意すること。」などが挙げられています。
(エ) 通勤・外勤に関する感染防止
上記通知では、「多くの人が公共交通機関に集中することを避ける、職場内の職員の密度を下げる等の観点から、時差出勤のほか、可能な場合には公共機関を利用しない方法(自転車通勤、徒歩通勤等)の積極的な活用を図ること。」、「出張による移動を減らすため、テレビ会議等を活用すること。」などが挙げられています。
(オ) 在宅勤務・テレワークの活用
上記通知では、「職場や通勤・外勤での感染防止のための在宅勤務・テレワークを活用すること。」、「発熱、咳などの風邪症状を呈していないものの、濃厚接触等により感染 のおそれがある職員が勤務を継続できるよう、在宅勤務・テレワークを活用すること。」というように、在宅勤務・テレワークの活用を求めています。
(カ) 風邪症状を呈する職員への対応
上記通知では、風邪症状を呈する職員の対応として、「風邪症状がみられる職員への特別休暇の使用(症状によってはテレワークを指示することを含む)とともに、その間の外出自粛を勧奨すること。」 、「職員が安心して休暇を取得できる体制を整えること。」などを求めています。また、上記通知は、「特に、①高年齢職員、② 基礎疾患がある職員、③免疫抑制状態にある職員、④妊娠している職員について配慮してください。」と一定の者に対する格別の配慮を求めています。
(キ) 陽性者へ対応
上記通知では、「職員が陽性者等になったことをもって、不利益な取扱いや差別等を受けることはないことをあらかじめ周知」することなどを求めています。
(ク) 感染防止のための情報の周知
上記通知では、「健康管理者においては、関係府省、地方自治体等がホームページ等を通じて提供している最新の情報を収集し、必要に応じ感染拡大を防止するための知識・知見等を職員に周知」することを求めています。
(ケ) 妊婦への配慮
上記通知では、「妊娠中の女性職員については厚生労働省が妊婦の方々などに向けた新型コロナウイルス感染症対策を取りまとめていますので、以下のホームページ(筆者注:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10656.html)も参考にしてください。なお、使用者側として出勤を控えさせたい場合には、 職員に対し職務命令として在宅勤務を命ずることなどにより勤務する場所を指定することが考えられます。」というように、妊婦について格別の配慮を行うことを要請しています。
また、「ウ 妊婦について」で解説するように、妊婦が請求した場合には、一定の措置を取らなければならないことが定められていますので、そちらも確認してください。
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