私は、朝、混雑した電車に乗らなければ、会社まで通勤できない場所に住んでいます。私としては、感染を避けたいので出勤したくありません。しかし、会社は通常通り営業しており、私にも出勤するように命じています。従わなければならないのでしょうか。

2020/4/25

使用者には、労働者の健康等について、安全配慮義務があります(労働契約法5条参照)。通勤電車は、閉鎖空間であり、かつ、乗客同士の距離がとても近いため、新型コロナウイルスに感染するリスクがあるものと考えられます。混雑していれば尚更です。混雑した電車を利用して通勤しなければならない場所に居住する労働者から要望があれば、会社は、労働者の安全に配慮するように、例えば、時差出勤や勤務時間の短縮、テレワークを認めるなど、労働者が新型コロナに感染するリスクを抑えるようにする適切な措置をとる必要があります。

そのような労働者の要望があるにもかかわらず会社が出勤を命じた場合、それに労働者が従わずに欠勤しても、そのことを理由に解雇することや懲戒処分をすることは認められません。つまり、安全配慮義務に違反する出勤命令に対して労働者が拒否しても、それは処分の対象とはならないと考えます。また、感染リスクを考えての欠勤は、解雇や懲戒処分の客観的合理的理由にはなりません(解雇について労働契約法16条、懲戒について同法15条。なお解雇についてはQ9-2、懲戒についてはQ2-3も参照して下さい)。

出勤をしなくてもテレワークなどで労務の提供ができる業種や業務等は多くあります。そのような業種や業務の場合、テレワークでの労務の提供を申し出ましょう。テレワークで労務を提供すれば当然賃金全額の支払いを受けることができます。会社が、テレワークで労務の提供をさせることができるにもかかわらず、それを拒否して無給休職とした場合、その休職による労務の不提供は「使用者の責めに帰すべき事由」(民法536条2項)によるものとして、賃金全額の支払いを求めることができる可能性があります。少なくとも法律上の休業手当(労基法26条。直近3か月の平均賃金の60%以上)に基づく支払いは認められると考えられます。