私は電車通勤をしています。現在、妊娠しており、感染リスクを避けるため、正直会社まで通勤したくありません。会社には、休ませて欲しいと言っているのですが、まったく取り合ってくれず、逆に、「欠勤したら解雇する」と言われています。有給休暇は使い切ってしまっていて、休む方法がありません。どうすればいいでしょうか。

2020/6/9

会社の対応は、妊娠中の女性労働者に対する配慮、安全配慮義務の観点から、許されない対応です。

使用者には、労働者の就労環境に配慮する義務があります(労働契約法5条)。そのため、使用者には、妊娠中の労働者の要望に応じて、休暇を取得させたり、柔軟に欠勤を容認することが求められます。

妊娠している女性労働者に対しては一層の配慮が求められます。厚生労働省は、一般的に妊娠中に肺炎を起こした場合、妊娠していない時に比べて重症化する可能性が指摘されていること、新型コロナ感染に対して不安を感じる場合もあることを踏まえて、「省をあげて妊婦の方々の安心・安全の確保に全力を尽くす」として、経済団体に向けて、妊娠中の女性労働者が休みやすい環境の整備、感染リスクを減らす観点からのテレワークや時差出勤の積極的な活用促進を要請しています(令和2年4月1日付 厚生労働省健康局長等「職場にける新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた妊娠中の女性労働者等への配慮について」)。

更に、事業主は、2021年1月31日までの間、その雇用する妊娠中の女性労働者から、保健指導又は健康診査に基づき、当該女性労働者の作業等における新型コロナに感染するおそれに関する心理的なストレスが母体又は胎児の健康保持に影響があるとして、医師等によりこれに関して指導を受けた旨の申出があった場合には、当該指導に基づき、作業の制限、出勤の制限(在宅勤務又は休業)等の必要な措置を講じ、また、事業主は、医師等による指導に基づく必要な措置が不明確である場合には、担当の医師等と連絡を取りその判断を求める等により、作業の制限、出勤の制限等の必要な措置を講ずる必要があります(男女雇用機会均等法13条2項、「妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」2(4)(令和2年厚生労働省告示第201号により追加))。

したがって、欠勤する場合、感染リスクを避けるためにやむを得ないことを使用者に伝えましょう(メールなどで形を残しておくことが重要です)。さらに、主治医に頼んで「母性健康管理指導事項連絡カード」に感染リスクやそれに対する不安を避けるために出勤を避けるべきという医師の指導を記入してもらい、このカードを使用者に見せて医師の指導に基づく措置を講じるよう伝えてから休みましょう。

こういった手順を踏んで労働者が欠勤したことを理由にして、使用者が当該労働者を解雇することは許されませんので、安心して下さい(Q9-2も参照)。

また、2020年5月7日から同年9月30日までの間に、新型コロナに関する母性健康管理措置として、医師又は助産師の指導により休業が必要と判断された妊娠中の女性労働者が取得できる有給の休暇制度(年次有給休暇を除き、年次有給休暇の賃金相当額の6割以上が支払われるものに限る)を整備し、その内容を労働者に周知した事業主であって、2020年5月7日から2021年1月31日までの間に当該休暇を合計5日以上取得させた事業主に対して、その日数に応じて上限100万円まで助成金が支給されます(新型コロナに関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金)。妊娠中の女性労働者が経済的にも安心して休めるように、事業主に対して、有給での休暇制度の整備とかかる助成金の活用を求めていくことが考えられます。