均等均衡待遇の課題と解決策を探る集会アピール

2025/7/11

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均等均衡待遇の課題と解決策を探る集会アピール

2025年7月10日
日本労働弁護団

 現在、労働政策審議会・職業安定分科会・雇用環境・均等分科会に設置されている同一労働同一賃金部会において、いわゆる働き方改革関連法によって整備されたパートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法の均等均衡待遇制度について見直しの検討が行われている。そこでは、「各法律の施行の状況等を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」ものとされている。

 均等均衡待遇に関する法制度は、言うまでもなく非正規労働者の待遇改善・格差是正を趣旨・目的とするものである。

しかし、労働契約法旧20条における一連の最高裁判例に見られるように、非正規労働者の待遇改善に後ろ向きの判決が続出している。最高裁は、賞与や退職金について、正社員人材確保なる使用者の主観的な目的を認め、労働者の請求を否定している(賞与について大阪医科薬科大学事件・最判令和2.10.13、退職金についてメトロコマース事件・最判令和2.10.13)。最も重要な基本給については、その不合理性を認めた裁判例は極めて少なく、労働者の請求が下級審等において否定される例が続いている。さらに、各種手当についても、非正規労働者の請求が不当に否定される例が続いている。その一例として、寒冷地手当等について、正社員との基本賃金の差にも関わらず、地域別の採用であることなどを理由として請求を棄却する例がある(日本郵便事件・東京高判令和6.2.21、札幌高判令和6.2.7など)。

私たちは、最高裁をはじめ裁判所に対し、以上のような消極的態度を改め、均等均衡待遇の趣旨・目的に立ち返った法律の解釈・適用をすることを求める。

 また、私たちは、上記部会に対して、このような裁判所の不当な判断が続いていることを直視し、実効性ある法改正を行うことを求める。まず、均等均衡待遇の判断の前提となる待遇の性質・目的について、使用者の主観的な主張に基づく認定を排除する方策を検討するべきである。そして、現在の「不合理」な待遇の相違の禁止から、「合理的でない」待遇の相違の禁止に変更したうえで、使用者が「合理的」であることを立証できない場合には「合理的でない」ことが推定される制度等にすることを検討するべきである。

 その他、派遣労働者については労使協定方式が「原則」となっている現状にあり、均等均衡待遇の埒外に置かれていること、均等均衡待遇原則違反の効果として契約の補充効が判例等において否定されており実効性に欠けていること、いわゆる正社員の労働条件を引き下げて均等均衡待遇規制を免れようとする例が出ていること、無期転換後の労働条件について待遇格差が存続する例が発生していることなどについても改善のための法整備を検討すべきである。

 私たちは、上記の措置を含む、真に実効的な格差是正のための立法措置がされることを強く要望する。

以上